ボカロP 12年生の点五Pです。
2回前の投稿でテスト制作全体の概要を書きましたが、今日はそのうちのテスト1 「AIで作詞作曲」での結果詳細をシェアします。
結論としては、作詞も作曲もAIが出してきたものがそのまま使えるようにはなりませんでした。
これは、以下の条件があったからだと思います。
★ターゲット層、コンセプト、音楽的方向性の詳細が決まっていて、それに沿って作ろうとした
作詞コンセプトも作曲の方向性もAIにお任せするのであれば、適当に見繕っていい感じのものを作ってくれますが、現在使えるツールは細かく条件が指定できないので、「こういうものが作りたい」という方向性が明確にあるときには、それに沿って作るのは難しいと感じました。
【1. コンセプト決め】
今回のテスト曲のコンセプトを決めていった過程はこんな感じ
再生数がイマイチ
↓
曲ごとに音楽性がバラバラで、何が得意なPなのかわかりづらく、ファンがつきにくい
(EDM、アイドル系、アニソン系、8beatロック、レトロなバラード...)
↓
EDMやボカロックをカッコよく作ろうとしても若い人にはかなわない...
レトロなロック(アナログ楽器使用。ギター中心ではなくピアノ中心)にして、おっさんとしての個性を前面に出す。
↓
必然的に、ターゲット層は学生ではない。
かといってある程度若くないと音声合成Vocalの曲は聞かない
ということで20代、30代の人たちをターゲットに作詞をすることに
↓
この層の人たちの共感を得られそうなトピックをリストアップ
その中の1つに「仕事で疲弊/コーヒーブレイクで現実逃避」というのが出て、それを題材にテスト曲を作ることに
↓
いったん自分でコンセプト、伝えたいことを書き出す
・この香り、この空気感、ひとりになれる昼下がり
・いやな上司も、未達のノルマも、降られたあの娘も
伸びない再生数も、ぜーんぶ溶かしてカップの底へ
・戻りたくない、夢を見ていたい
・コーヒーブレイクで全部壊れてくれるといいのに
と思っちゃうからコーヒーは麻薬
・時空をリセットするほど癒される、でもまた現実でもがくしかない
・大人になってこの価値を知った。
・もし思い通りの人生なら
このありがたみは消えちゃうかもだけど
【2. AIによる作詞】
ここまでの情報を入れてChatGPTに作詞させた結果がコレ
#### ①Aメロ
この香り、この空気感
いいなぁ、昼下がりに漂う静けさ
痛みも涙もすべて消えてく
カップの中の魔法みたいさ
#### ②Bメロ
いやな上司も、未達のノルマも
降られたあの娘も、伸びない再生数も
ぜーんぶ溶けて、カップの底へ
今だけは、現実を逃れて
#### ③サビ
戻りたくない、夢を見ていたい
コーヒーブレイクで全部壊れてくれたら
と思っちゃう、だからコーヒーは麻薬
時空をリセット、心を癒す
大人になって、この価値を知った
でもまた現実、もがくしかない
#### ④大サビ
もし思い通りの人生なら
幸せだろうね、そう思うけど
だけどさ、コーヒーブレイクの
このありがたみは消えちゃうかもね
ほとんどそのまんまやん!
もっと情報量少ない段階で作詞させてアイディアから出させてもよかったかも。
大サビで言葉を補ってきたけど、センスない感じ
「思い通りの人生」と「幸せ」というのは意味的に重複しててしつこい。
それにここでまた「コーヒーブレーク」という単語を出すのも重複感。
アイディア力のなさを露呈した感じ。
字数も合わせているようで合ってないし...
これなら自分で作詞してもあまり変わらなかったかも...
ただ、「魔法」という言葉はボクのアイディアで出てこなかったので、使わせてもらうことにした。
あとは曲を作ってみて調整だな、と
そのほかのAIツールを試したけど
・「シカキ」は字数は指定できるけど言いたいことを細かく指定できない
・「AIサッキョク」も題名だけから作るのでコンセプトを合わせるのは困難
ChatGPTのアウトプットも、想定している小節数、テンポからすると字数が多い。
字数指定して絞らせることもできたかもしれないが、このアウトプットからみると書いたことの範囲からしか言葉が出なさそう。
アクセントまで考慮して合わせるのも難しそう。
ということで、ChatGPTのアウトプットをベースで自分で絞込み、成型をしてみた。
言葉だけじゃなくて"Yeh"とか、ノリノリの叫びみたいなのも、自分で考えて入れてみた。(こういうのも言われなくてもアイディア出してくれたらいいんだけどね...)
Aメロ
この香り空気感 癒される午後
もうすべて忘れる 魔法の薬
Bメロ
うるさい上司も Yeh Yeh
未達のノルマも Yeh Yeh
振られたあの子も ぜんぶぜんぶ Ah
溶かしてカップの底へ
サビ
時空リセット するほどの麻薬
全部壊して くれたらいいのに
戻りたくない 夢を見ていたい
でもまた現実で
もがくしかないのヤダ
(かなり最終系の歌詞に近いところまで詞先で自力で作れた!)
【3. AIによる作曲】
このAメロ、Bメロ、サビでSUNOに作曲させてみた
ジャンルは、Rock 8beat J-POP
おおお、いい感じ!
クオリティも高いし!
でもボクが作った感全然ないし、レトロ要素 8beat感がない...
SUNOに任せてしまうと、自分の音楽性は失われてしまいそう
それから聴こえはいいけど印象には残らなそう...
変化のない単調な感じも。
やっぱ作曲、アレンジは自分でやるしかないな...
という結論。
ちなみに、試しにジャンルをDance、Trance、小室哲哉にしてみると
コレもカッコいい!
けどやっぱ自分の曲じゃないな。
勝手にマイナーコードにされちゃって癒し感全然ないし...使えない。
でも実は符割が参考になった!
このBメロ最後の「溶かしてカップの底へ」
という部分、バックを止めて一気に叫ぶみたいなメロの持っていき方は自分の発想になかったので、取り入れることに。
SUNOも符割やアレンジの参考になることはわかった。
【4. 詞先での作曲】
とは言え、詞先で作曲したことがなく、どうしたものかなと。
考えた結果、こういう手順で作ることに
作曲のターゲットにしたい好きな洋楽曲(20世紀の曲)をリストアップ(約250曲)
↓
そのうち、今回テスト制作の曲のコンセプトに合いそうな曲を選定。その中の別々の曲のAメロ、Bメロ、サビのコード進行をつなげて仮コード作成
↓
リズムループを流しながらCubaseのコードトラックを使ってコードを修正。洋楽曲と同じままだと変化が少なくて、日本人向けとしては盛り上がりに欠けるので経過コードを長めにさしはさんだりしてアレンジ
↓
決めたコード進行、基本リズムをバックに作った歌詞を当てながらはめ込んでメロを作ってしまう。
字数、アクセント、ノリの観点から合わない部分は歌詞の方を手直し。
できたのがコレ (再掲です)
自分で作った感出たし、音楽的にも8 Beatのピアノ曲にできたし。
結局、作詞も作曲も自分でやって、一部のアイディアをAIからヒントをもらった感じ。
コードと歌詞が暫定でもできていれば、自力でメロ作りができることが確認できた!
このやり方で、曲が量産できるかも。
思ったよりAI使えてないけど、助けてもらいながら自分で作れる確認ができたことで、テスト1は成功!
達成感、満足感ヤバいです!
が、以下のこともわかってしまった...
・完全詞先ではなく、歌詞を適宜変更しながらメロを作っていくので、作詞家の人から依頼をうけて曲だけつけることはできない
(好きに作り変えてよい、という条件にしてくれたらできるんだけど...)
・2番は1番のメロ完成後、曲先で改めて作成するしかない...
結局自分でやるしかないのだ...
他力本願、AI力本願じゃダメなのね...
悟りました。それも成果ですな。
しかし、コンセプト、音楽性を気にせずいい感じでAIに作曲してもらえばいい、というのであれば、十分すぎるクオリティで曲ができることもわかった。AIは着実に進化してるね。
そのうち、コンセプトどおりのものもできるようになるのも時間の問題か...
そうなると作詞家、作曲家の存在意義を問われることになる...
ますます個性、音楽的方向性が重要に。今回方向性の明確化をすることにしたのも正解だったなと。
テストしてみてそれも確認できた。よかった、よかった。
で、次回は「テスト2 アナログ感のある音作り」についてです。
お楽しみに。
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